夢・・・夢を見ている・・・これは誰の夢だろう・・・
Kanon
株式会社ビジュアルアーツ Key
お勧め度 作品 機種 ○ Kanon (Win[X指定]) − Kanon (DC)(PS2)
この作品、実は発売日には買わなかったのです。評判をあちらこちらから聞いて、これはよさそうだと思ったことと、前作である「ONE」を借りただけで買っていなかったので、今回は買おうと決め、ようやく買いました。
発売から3週間も経っているにもかかわらず、運良く初回限定版を確保でき、さっそくプレイ。
・・・序盤から、各キャラ共にボケがさえわたりまくり、非常に面白い。ちょっと前作の影が見え隠れする所はあったけど、それ以外は文句無しの展開で序盤から中盤までは続きます。
で、まず一人目、川澄舞をクリア。で、その時点ではまりまくっていた私はその後1週間もしない内に全キャラクタをクリアしてしまいました。ヒロインの人数は5人と少ないほうですし、全編アドベンチャー形式ですので、シナリオの量が並ではなく多いのですが1回についてはそれほど時間は掛かりません。難易度的には前作の「ONE」と比べると随分低くなっています。
肝心のシナリオですが、全キャラクターを通して大枠の部分で真新しいようなシナリオはありませんでした。どうも、私のように少女漫画の短編を好んで読むような人間にはどこかで作られたようなシナリオがほとんどに思えたのです。
しかし、このゲームはシナリオ系のLSGとしてはとてもお薦めです。「ToHeart」にはまれなかった人などには特にお薦めです。(もっとも、「ToHeart」にはまれない人には「ONE」の方がいいかもしれませんが)大枠はありがちなシナリオでもそのシナリオにすさまじいばかりのスパイスが加わり、素晴らしい作品になっています。
まず、特筆すべきは各キャラクターとのコミュニケーション。これが絶妙なテンポで進んで行きます。ちょっと例えは悪いかもしれませんが、よくできた漫才を見ているようでもあります。
こういったゲームの手法としてはよくあるのですが、序盤から中盤にかけてキャラクターを多く出し、感情移入を深めた上でクライマックスへ進んで行くというパターンを使用しています。ですが、このプレイヤーに感情移入をさせるということは非常に難しい事で、これに成功する作品は一握りです。まず、この作品はその点を完全にクリアしています。
そして、クライマックスシーンでも、おおわくではありがちなシナリオであったとしても、それに職人芸的な情景描写や心理描写を加える、あるいはゲーム特有の手法を使うなどして全体的にとても良い作品に仕上がっているのです。
ここで、一つ断っておきますが、クライマックスシーン=Hシーンというわけではありません。むしろ、例によってこの作品もX指定である事の意味がほとんど無い作品でもあります。この作品はおそらく家庭用に移植される事となるでしょうが、その時のHシーンを取り除き、声が当たるであろうその作品こそがこの作品の真の姿になるだろうと思っています。
また、先ほど、ゲーム特有の手法と言いましたが、この作品はシナリオ以外の面、グラフィックと音楽にも優れています。
グラフィック面で特筆すべきはキャラクターの表情パターンの豊富さでしょう。ヒロインの一人である名雪の表情パターンは一体いくつあるのでしょうか?せっかく「悠久幻想曲」並に通常表示の表情絵が大きいのですから、イベントグラフィックだけでなく普通のグラフィックもCGモードで見たかったです。またこの作品では、24bitカラーを使用すると夕焼けのグラデーションなどがとても綺麗に表示されるので、できるならば24bitカラーでプレイしたほうが良いと思います。筆者も最初は16bitカラーでプレイしていたのですが、24bitにするととても違いがはっきりと出ていました。
音楽も素晴らしい物ばかりです。シナリオとクライマックスの場に飲まれて手に汗を握り、あるいは目に涙を浮かべている時、シナリオの進行を一時止め、ふと耳を澄ますとその音楽が聞こえてきます。この作品の初回限定版のおまけは音楽CDなのですが、このゲームをクリアしてからはひがな一日聞いていたりします。オープニングテーマ、エンディングテーマもいい曲なのですが・・・カラオケには入らないでしょうね・・・。
では、次に私から見た各キャラの紹介なぞ・・・。順番は私が押している順です。
夜の校舎で出会い、真剣を持って何か目に見えない物と戦う少女。非常に無口、無表情。それでも、しっかりと自分の考えは持っているようです。始めて会った後、主人公が問い詰めると「私は魔物を討つ者だから」と一言。
- 川澄 舞
どうも、私はこういう一風変わったという表現を飛びぬけたかなり変わった娘を気に入る傾向があるようです。一番最初にクリアしましたが、全員クリアして尚、超えるキャラクタは現れませんでした。また、このシナリオが比較的オリジナリティが高かったと判断したのも原因になっているかも。実際は、こういった話に長く触れていなかった為に錯覚しているだけだと思いますけど。
しかし、音楽だけは文句無しに一押し。題名を「少女の檻」といいますが、透明感と緊張感を兼ね備えたとてもきれいな音楽です。とゆーわけで、だれかMidi作ってください。(お
好きなことを表現する時に「嫌いじゃない」といい、程度によっては「かなり嫌いじゃない」、「相当嫌いじゃない」と、不思議な表現を使います。
一般的な人気の度合いとしては一番では無いでしょうか。通称“あゆあゆ”。主人公が回想シーンでこう呼んでいます。
- 月宮 あゆ
キャラクタとしてはとにかく元気、なおかつドジ。とても、主人公と同年齢とは思えないのですが、それもシナリオの伏線になっています。たいやきが大好物で、たいやきを買った後、お金が無くてそのまま逃げてきた所を主人公とばったり出会うと言うすさまじいであい。
しかし、シナリオは実はかなりよくあるパターンの話で、クライマックスシーンはその数シーン前で展開が読めてしまっていましたし、エンディングも想像していたものから外れることはありませんでした。しかし、そのキャラクタ性は強烈な印象をプレイヤーに与えます。この娘を邪険にする事はあまりできないのでは無いでしょうか。
また、他のヒロインのシナリオについても大きくかかわってくる所があるキャラでもあります。表面では騒いでいるだけですが、密かにとても重要なキャラです。その為に、名雪と栞をクリアする前にあゆをクリアしておいた方が良いでしょう。
「うぐぅ」が口癖で、揚句の果てには主人公に「うぐぅは風邪ひかないって言うからな」などと言われてしまいます。
名雪と並んでファンタジーで無いシナリオです。病弱で学校を休んでいる少女。アイスクリームが好物で、最高気温が氷点下の事もある北国で昼休みに中庭でアイスクリームを食べていたりします。栞の性格は序盤から中盤ではあまりつかみどころがありません。良く笑う、明るい少女。そんな感じです。
- 美坂 栞
なぜ、この少女につかみ所が無いのか。なぜ、真冬だと言うのに好んでアイスクリームを食べているのか。この辺りの事情はおいおいわかっていくのですが・・・、勘のいい人にはすぐにわかってしまうかもしれません。
「そういう事言う人、嫌いです」が口癖。シナリオが進むと絵を描くことが好きなことが判明します。
主人公が居候する事になる水瀬家の一人娘で、主人公のいとこです。この作品はまずこのキャラを出して、プレイヤーをぐいぐいと作品世界へと引き込んでいきます。
- 水瀬 名雪
性格は普通に明るい少女・・・なのですが、わりと天然ボケの上にというこれ以上ないと言うほどの寝ぼすけ。どうも、1日12時間寝ないと本調子になら無いようです。これで、めっぽう足が速く、陸上部の部長などやっています。案外、寝坊して学校に毎日走って登校しているうちに足が速くなったのかもしれません。また、朝起きる為に目覚まし時計を大量に持っていたり(しかし効果なし)、猫アレルギーなのに猫に目が無かったり、イチゴが好物でなにかあると主人公にイチゴサンデーをおごらせようとしたりとキャラとしてはものすごく細かく設定されています。
これで、メインのシナリオが良ければおそらく2番目までには上がったと思うのですが・・・、どうもキャラ作りに疲れてしまったのかメインのシナリオの展開がちょっと安直すぎました。その為、キャラが立っている割にはこの位置になってしまっています。
まあ、シナリオが安直というよりは、こういった展開のシナリオを私が好まないだけなのですけどね。
「朝〜、朝だよ〜」、「ねこーねこー」など、数々の独特な台詞の言い回しが印象的です。
ラストになってしまいましたが、沢渡真琴です。どうも主人公に恨みがあるらしく、出会い頭にいきなり主人公に襲い掛かってくるのですが、もちろん主人公に覚えはありません。で、真琴自身はと言えば主人公に恨みがあることだけ覚えていて、あとは忘れている。で、なし崩し的に水瀬家に居候する事になってしまいます。その後、毎晩主人公にいたずらをしてくるようになります。
- 沢渡 真琴
シナリオ的にはちょっと盛り上がりに欠けるところがあるかもしれません。真実はあきらかにされるのですが、なんとなくそのまま終わってしまうような形になっていて、もう一幕欲しかったかなという感じです。
途中で猫を拾ってくるのですが、まるごと頭の上に載せたりして謎です。
そういえば、ふと思ったのですが、LSGの名前のバリエーションもちょっと苦しくなりつつありますね。舞、あゆ、真琴の三人は他のゲームで聞いた事があります。(あゆは鮎ですが)こうなってくると、逆に奇をてらった名前よりも普通の名前のほうが良いのかもしれませんね。
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1999.7.7 起稿
さて、一世を風靡したこの「Kanon」ですが、改訂に際し、そこそこお勧めのレベルに留めて置くようにします。 これは、「Kanon」が余りに売れてしまったため、後のLSGの多くが「Kanon」の亜流となってしまったからです。そして、量産された物語の中にあって、「Kanon」が依然輝き続けることもなく、多くの光のなかに埋没してしまったからです。
この流れは本流の続編である「Air」でも断ち切ることができず、私は「Lの季節」へと流れてしまったため、もはやこの流れに戻ることはありませんでした。このころは、物語主体のゲームが本格的になってきており、予定調和のみの物語でももてはやされる傾向が強かったのですが、以降、そういったことも薄くなり、ギャルゲーの物語が持つ真の意味が問われ続けているのだと思います。
2003.8.24 追記