せつなさの向こうに何を見るのか
Sentimental Graffiti シリーズ
マーカス、サイベル、コミックス、NECインターチャネル
Sentimental Graffiti (SS)(Win95) Sentimental Graffiti2 (DC) このゲームがこの位置にあるということ。それは、ある人は至極当然のように受け取るでしょうし、ある人は眉をしかめるでしょう。このゲームは一般向けにはおそらくお勧めできません。このゲームの唯一といって最大の長所は、各キャラクターが良く定義されているという一言に尽きると思います。よく表現されているではなく、よく定義されているです。
なんだか、数学用語みたいな言い回しですが、ゲーム内容にはとても矛盾点が多いのです。まず、一番いけないのはシナリオ上の矛盾が多いこと。イベントごとの相関関係がはっきりと崩れる所が数ヶ所あります。しかし、さすがにWin版では直っているところが多かったようです。 次に、常人には考えられないほど超人的な動きをする主人公。もともと、全国の12都市に幼馴染のかわいい女の娘が点在しているという時点ですでに常人では無いのですが、平日は全てバイト、金曜の夜に出かけてあちこち回って月曜の朝に帰ってくるの繰り返しをほぼ一年繰り返すことができますか?
で、こういう主人公にはプレイヤーは完全にシンクロはできないのではないでしょうか。少なくとも私はできなかったようです。
グラフィックは原画からは2レベルくらいダウンしたもので、あちこちで結構叩かれました。肝心のシナリオはどうかと言うと、各キャラの個性を際立たせていることには成功していると思うのですが、システムの都合上、全キャラに共通のレールのような物があり、結果として全てのシナリオが同じようなエンディングを迎えることになり、2人クリアした時点でラストが見えてしまうものになっています。
さて、このシステムの都合上というのがまた曲者で、SS版では全員のキャラに少なくとも一回は会い、半数のキャラのイベントを少しずつ進めるなどの条件をクリアしないとベストエンドへはたどり着けません。このあたり、製作者が何を意図してこのようなシステムにしたのかが理解に苦しむ所だったりします。誰か知っている人はいらっしゃるでしょうか。但し、この仕様はSS版のみで、Win版ではただ一人を登場させてベストエンドクリアをすることはできます。
では、このゲームのゲームとして優れているところは全く無いかと言うとそういうわけでもありません。システム上の一番の特徴はヒロインを主人公の側から振ることができること。今までも、シナリオの選択肢として登場人物を振ることのできるゲームはありましたが、主人公から能動的に振ることができるのはこのゲームが始めてではないでしょうか。また、振ったことが原因として起こるイベントも精神的に非常に打撃を与えるものとなっており、興味深い物であります。
また、ショートカットを多用した操作性の向上などはPCユーザにはなじみの深い物であり、プレイ時間が短縮されるので、他のゲームにも見習ってもらいたいところです。同社の「Brack Matrix」にも同様の機能は存在します。また、CDのシークもそれほど遅くは無く、プレイ間隔は概ね良好です。
しかし、これだけの理由で、ここまで上位に押しているわけではありません。では、このゲームの魅力とは一体何なのでしょうか。
このゲームのキャラクターについて私は書きました。「良く定義されている」と。通常、12人いれば気を抜いたようなキャラクター、人気の無いキャラクターが一人や二人は出てくる物です。しかし、このゲームでは多少の人気の多寡はあるものの、それぞれのキャラにそれぞれの熱狂的なファンが存在します。
このゲームはまず、原画ありきでした。発表当時、各サターン系の雑誌に載っていたのはいうまでもなく綺麗に彩色された原画だったのです。私の目から見ても原画はまず合格でした。そして、設定。あちこちにいる女の娘と遠距離恋愛をするというコンセプトは当時のゲームとしてオリジナリティが有り十分魅力的に映りました。これも合格でした。
しかし、市場での人気は私の予想を遥かに超えて膨らんで行っていました。それを認識したのは「Sentimental Graffiti First Window」の発売を以ってしてです。これはゲーム本編では無いので数には入れませんでしたが、限定3万本しか発売されなかった「Sentimental Graffiti First Window」はあっという間に品切れとなり、しばらくは定価の6〜7倍の値段で取引されていました。それまでも、各キャラごとの音楽CDなどが発売されていたのですが、売れているのかなとも思っていたのですが、それは杞憂だったようです。「Sentimental Graffiti First Window」は現在でも市場価格は定価の1.5倍しています。
私も「Sentimental Graffiti First Window」は欲しかったのですが、人気の読み取りを間違えた為入手できず、本作の発売まで待つこととなりました。そして、出た本作は前述の通りの内容でした。
しかし、ゲームの中でも各キャラだけはよく動いていました。各キャラの性格は非常によく出ていて、その魅力は十分に発揮されていたでしょう。全体でみるとちぐはぐな世界バランスが目立っていましたが、キャラ個別で見ればそれほど気になる物でもありませんでした。
それでも、それほど深くはまるほどのシナリオかというと、私自身首をかしげます。私がこのゲームにはまった真の原因は他にあります。
七瀬優。一人のキャラの存在が私をここまで引っ張ってしまったと言っても過言ではありません。現実世界をその背景世界とするLSGは数多くありますが、彼女のように自然を歴史を世界を愛しているキャラクターは他にはいませんでした。ゲームをプレイして七瀬優に出会う。ここが全ての始まりだったのです。CDを買い、アニメを見るようになりました。
今はもう閉鎖されてしまいましたが、バンプレストのセンチメンタルジャーニーというPS用ボードゲームの企画Webページがありました。そこには「Sentimental Graffiti」の各キャラクタ個別にBBSが設置されていました。丁度、ネットを始めた時期がそのWebページの開設と重なっていた私は、ほどなくそこに入り浸るようになりました。
なかでも、七瀬優のBBSは他のBBSとはまた変わった雰囲気を出していました。みな、我が強く、自分自信が変わり者であることに誇りを持っているような連中ばかりで、彼らと知り合えたことが「Sentimental Graffiti」をやっていて一番良かったことです。辛い時には励ましあい、楽しい時にはばかをやって大騒ぎする。とても暖かい雰囲気のする空間・・・というと変な言い方かもしれませんが・・・がそこにはありました。
さて、ここまではまって私はいくつか「Sentimental Graffiti」のいわゆるグッズに手を出すことになりました。そして驚いたのは、音楽CDの中にとてもクオリティの高い曲が数曲あったことです。特に、沢渡ほのかのテーマ「Long Distance Call」、星野明日香のテーマ「Sweet Tear」はメロディも歌詞も耳に残るとてもよい曲です。私は基本的には七瀬優関係の物しか買わないようにしていたのですが、この2曲はあまりにできが良いのでやはり買ってしまいました。
ただ、グッズの中にはこんなのどうするんだというような物もなきにしもあらずです。例えば、各キャラの通っている学校の校歌集なんていうのも発売されているのですが、完全にコレクターアイテムです。・・・まあ、程ほどにということですね。
また、七瀬優に限らず、各キャラクターはこれらのグッズによって、とてもよくそのキャラクター性が補間されています。そしてそれらは一貫性が強く、各キャラの魅力をとても際立たせる物となっています。
各キャラクターが良く定義されているとは即ちこういうことです。このゲームはまず、キャラクターありきなのです。世界設定や、シナリオはあとからつけたしたのがほとんどでしょう。また、CDドラマなどのサイドストーリーでは完全に別世界になっているようです。
私は別にこういう作り方を否定はしません。キャラクターを前面に押し出したこのゲームの作り方は商業的にも成功をしているからです。ゲーム自体のできがそれほど良くは無いことはほとんどのプレイヤーがわかっています。それでも、この作品から離れないのはよく作りこまれたキャラクターがいるからです。世界に関係無く、一人一人のプレイヤーの頭の中で一人歩きして行くキャラクター達。プレイヤーにそのように考えてもらえるのは一種、デザイナ冥利に尽きるのかもしれません。
そんな各キャラの紹介などしてみましょう。例によって順番は私が押している順です。
七瀬 優
命の息吹、星の煌き、先人達の偉業、こういったものを大事にし、世界を愛する娘。私はこのキャラクター程衝撃を受けたキャラクターは存在しません。12人で、誰が一番自分に感性が近いかと言えば、間違い無く彼女を指すでしょう。
彼女の登場はとてもセンセーショナルでした。なぜならば、現実であれ、架空であれ、私は彼女のような存在を知らず、想像もしていなかったからです。主人公に触れて旅を始め、あちこちで星空を眺める。草木や、渓流、そよぐ風、そういった自然と一体化する。 しかし、そんな彼女はその考え方の特殊性ゆえに他人との接触を嫌い、あちらこちらを旅します。彼女にとって、本当の人との触れ合いとは旅先で起こる様々な出来事のことなのでしょうか。
ゲームにおける彼女のイベントの一つ一つが頭の中に刻み込まれました。妹尾の滝の清流を癒しと感じる心、錦帯橋を作った先人の知恵と今に伝わってきた時の流れに思いをはせる心、海に浮かぶ厳島神社の鳥居に神秘を感じる心、展望台で流星が流れるのをわくわくしながらみる心。これら、全てが私の好みに合っていました。そう、ここまで共感できるキャラクターは後にも先にも出ないのではないでしょうか。
彼女がもっとも嫌うことの一つに価値観の押し付けがあります。そして、彼女を慕う人達の間にもそれは共通しているようです。七瀬優のBBSがそんなあったかい雰囲気にあふれていたのは、他人を思いやることができていたからでもあると思っています。
彼女との出会いは私に大きな影響を与えました。特にネット上の大勢の人と知り合えたことが何よりもおおきな宝です。
しかし、その価値観の押し付けを嫌うことは彼女の弱点にもなっているようです。一人で行動することの多い彼女は、自分が他人に迷惑をかけるような行動をしていないかをひどく恐れるようです。彼女を相手にするにはそういった心配事を含め、全てを包むような懐の広い人でなければならないのでしょう。
永倉 えみる
最初の印象はふざけたキャラだなあという印象が強かったのですが・・・、いつのまにやらこの位置に。(笑)
会話の語尾にりゅんりゅんと不思議なフレーズをつけるのが一番の特徴のキャラクター。でもそれだけではなく、UFOや妖怪、黒魔術など、とにかく不思議なことに興味を多く持つ娘です。
さて、ここまで順位が上がってきている原因1、イベントに遠野のシーンがあること。私、好きなんですよ。妖怪のふるさとと言われている遠野。是非、一度、柳田国男氏の十の物語を片手に訪ねてみたい所です。
で、その2、どうも、自分でオカルト研究会を作って部長をやっていたらしいということ。しかも、どうも理系の成績はかなりよさそうなのです。
私も変なことが好きだったりしますし、高校時代に怪しげな部活の部長をしてたこともあったり、どうもかぶります。そんな、こんなで気が付いたらかなりキャラクター的に気に入っていました。
しかし、こんなキャラクターなので、やはり他人に理解されにくいという設定があります。って、実は、この部分もつぼなのですが。(爆)オカルト関係がある程度好きな人は一緒にいると退屈しなさそうです。
安達 妙子
主人公が、小学校3年まで一緒の建物で暮らしていたと言うことで、真の幼馴染と言えるかもしれません。彼女の特徴は家庭的で家事一般をそつなくこなし、その上で非常に面倒見がいいということです。
現実世界では絶滅している・・・と言うことはないとは思いますが、非常に稀有な存在であることは間違いないでしょう。ともすればお節介になりがちな面倒見のよさをもっていますが、彼女のファンはそんなことは露とも思わないのでしょう。
実際、彼女のファンはその数も多く、彼女のような女性が求められているのがよくわかります。(笑)もっとも、面倒くさがり屋のやろう共が多いだけかもしれませんが。(笑) 彼女の悩みは都会的なファッションセンスが無いことと、また、それらが自分に似合わない(と思いこんでいる?)こと。絵からはわかりませんが、かの世界では彼女の容姿はそれほど良くはないのでは無いかと考えています。
しかし、彼女の性格を考えればそんな欠点は些細なものでしかありません。家事全般をそつなくこなし、いつも主人公を立てるように行動する彼女の母性に惹かれる人は後を絶ちません。
星野 明日香
今時の流行好きな女の娘からイメージされて生まれた彼女ですが、時として全く異なる純真な心をのぞかせてくれます。
基本的には流行りものの大好きな女の娘。流行のファッション、映画、遊び、その他いろいろなものまで、新しい事には目がありません。性格は明るく、大勢の友人がいます。そして、彼女はその友人達に遊びの情報を色々と伝え、一緒に遊び、常にその中心にいます。
しかし、彼女は思い出の中に一つの大きな傷を持っています。それは、遥か遠くに忘れ去られ、普通は記憶の海の中にもぐりこんでしまうものかも知れません。しかし、彼女はその思い出を忘れずに大切に持っています。
自分の想いを大切にする。彼女の明るい性格と、その表面からは見えない彼女の繊細さが彼女の魅力と言えるでしょう。
さて、彼女も最初はそれほど順位は高くはなかったのですが、ここまで上がってきた理由はテーマソングの「Sweet Tear」によるところが大きくあります。非常によい曲です。機会が有ればぜひ聞いてみてください。
杉原 真奈美
いわゆる、薄幸の美少女(と、言うと反論があるかもしれませんが)。病弱で、学校に出席することすらままならない時もあり、普段は森の中の自宅でおとなしく暮らしている女の娘です。
そんな彼女は、時間があると大好きな小鳥を眺めています。主人公との思い出も小鳥に関することです。彼女は、自由に空を飛べる小鳥をうらやましくも思いながらも、いつも大切に眺めているのです。
彼女は自分一人でできることの少なさをいつも嘆いています。彼女は知らず知らず、自分に自信を付けてくれる存在を望んでいるのかも知れません。そんな彼女に無限の可能性を与えることができた時、また今までとは変わった世界が待っているのかも知れません。
森井 夏穂
陸上部のホープとして活躍する運動が大好きな少女です。主に長距離選手として活躍しています。実家はお好み焼きやで、よくお店を手伝っています。大阪というポジションによくあった、元気な難波っ娘のイメージです。時々、よくわからないセンスのユーモアがその口から飛び出すことが有ります。
性格的に一番の特徴は、真面目で一途なところ。というのも、ここがシナリオ上の一番のポイントになっています。もっとも、それ以外の面ではいたって普通の女の子で、一途な行動が裏目に出てしまい、悩み込んでしまうことも多いようです。
そんな性格なので、周囲を振り回してしまうことも多いようですが、もう一つのきの良い性格が幸いして、よく頼りにされ、多くの友人がいます。その一途な性格は恋の相手にも及ぶようです。彼女の相手はよほどバイタリティのある男性でないとつとまらないでしょう。
保坂 美由紀
非常にまじめな女の子で、おそらく学業に関して言えば12人中トップの実力を持っているでしょう。実家が加賀友禅の呉服問屋であり、その為、東京に出て進学するか、地元に残ってするかが悩みの種で、そのことを主人公によく相談します。
彼女はある意味、真奈美や若菜よりも大人しい性格をしているのではないでしょうか。絵を描くことが趣味で、大学もできれば美大に行けるなら行きたいと考えているようです。また、絵を描くこと意外にも読書も好きで、近代日本の名作を好んで読むようです。
かと思うと、ユーロビート系の音楽なども聴いたりします。真面目で、物静かと周囲からは思われている彼女のあまり知られていない面ですが、これが主人公との触れ合いのきっかけになります。
彼女の場合はその真面目さゆえにささいなことで思い悩むことが多いようです。その一つ一つを面倒くさがらずに受け止めることが彼女との付き合いの中で一番大切なことのようです。
山本 るりか
色々な意味で、彼女は12人の中で一番普通のキャラクターと言えるでしょう。特にはっきりとした特徴はなく、学校では友人達と一緒に楽しく騒ぎ、放課後はアルバイトをしてこずかいを稼ぐ。運動が苦手なわけでもなく、また、際立って勉強ができるわけでもない。いつも、なにか楽しいことはないかと探しているような、本当にどこにでもいるような普通の女の娘だったりします。彼女の長所はその際だって外向的なところかもしれません。イラストではいつも八重歯を覗かせた笑顔が印象に残ります。
そんな彼女のシナリオも、それほど特殊ではない物語。大人になってからこのようなことが起こっても冷静に対処してさほど問題にならないことが、子供時代の彼女たちにはわからず、そして、長い間忘れられない苦い思い出となります。もちろん、主人公と彼女の思い出はこれだけではないのでしょう。思い出の数々は相乗して彼女らを覆い包みます。
そんな彼女の明るさ、行動力に惹かれる人も多く存在します。このゲームでの彼女の存在。それは、普通であることが一つの彼女の重要な特徴となっています。考えてみれば、現実にすぐ見つかりそうな性格をしたキャラクターは、とかくこういった作品には少ないものです。この作品がこの作品である一種の象徴とも言えるキャラクター。それが、彼女なのでしょう。
綾崎 若菜
るりかとは違って、今の日本ではほぼ絶滅しているのではないかと思われるような典型的な大和撫子。この一言が彼女の全てを表しています。
大和撫子というと普通はどのようなことを思い浮かべるでしょうか。大人しくて控えめな印象と性格。長い黒髪と和服が似合う美人。茶の湯や日本舞踊、琴などの精通している教養の深さ。これらの全てを彼女は兼ね備えています。
名家に生まれた彼女は幼い日から厳しいしつけを受けてきました。彼女の面倒は忙しい両親に代わって祖父が見ているのですが、その祖父の意向が彼女の人格形成に大きく影響しています。 当然のように彼女は箱入りで育てられた生っ粋のお嬢様です。外に出ることはめったに無く、そのため、外の色々な場所に強い憧れを抱いているようです。しかし、今までのしつけによってそういった場所へ行くことを悪いことだとされている彼女はなかなか外に出れません。
そんな彼女を外の世界に引っ張ってくれたのが主人公という訳です。それから、彼女は主人公に憧れにも似た気持ちを抱くこととなります。
さて、これほどのお嬢様なので、いつもは厳しい監視の元に行動しています。門限は厳しく設定され、彼女の祖父は彼女が男性に近づくことを許しません。彼女はそのキャラクターから12人の中でも人気のある方へ分類されますが、彼女と本当に交際できるような人物は、国中探してもごくわずかでしょう。
松岡 千恵
黒をイメージカラーとする彼女は、男勝りの性格をしたロックバンドのボーカルという、ちょっと代わったポジションにいるキャラクターです。長く、黒い髪の毛をポニーテールにまとめているのが特徴です。中学まではろくに周りから怖がられ、ろくに友人もできず、音楽を友として過してきています。そんななかに、彼女が怖がれれていることを知らない主人公が話し掛け、物語が始まります。
高校に入ってからは、バイクに乗るようにもなり、ますます男勝りに磨きがかかってしまっています。このように、恋愛感情からはとんと縁遠い行動を常にとっています。
彼女はライブハウスで自ら作詞した色々な歌を歌います。しかし、なぜか、その中にラブソングは一曲も有りません。彼女の性格を考えれば別におかしいことではないのかもしれませんが、そこに彼女の想いの根底があります。
さて、彼女は女の娘らしくないという一点において、12人の中でもかなり特殊な存在です。しかし、数ある作品の中には少なからず、こういったキャラクターも存在します。特筆すべきはその有りがちなキャラクターの中で、陳腐な存在に埋没してしまっていないこと。多くのエピソードが、有りがちなキャラクターの中から彼女を掬い上げています。彼女に入れ込んでいる人も少なからず存在しているのですから、男勝りと言う枠で括ってしまうこと以上の何かが、確かに彼女には存在しているのです。
遠藤 晶
プライドの高いお嬢様というのが、彼女の一番の特徴です。しかし、こう、一言で片づけてしまうと、かなり語弊が有ります。と、言うのも、こういった作品に多数触れている人はわかる通り、プライドの高いお嬢様が良い役割をしている作品はあまり無いからです。
邪魔なキャラだったり、ギャグキャラだったり、とかく、悪い印象が先行しがちです。しかし、彼女はそれだけではないということは、その人気を考えてもわかります。
彼女の魅力はどこにあるのか。彼女の遊び心や、彼女の持つ自信、そういった所から惹かれているのではないでしょうか。
彼女のもう一つの特徴。それは、バイオリンの腕前です。しかし、コンクールでどうしても準優勝に終わり、プライドの高い彼女が賞状を破り捨てようとするようなエピソードが存在します。彼女はいつも自信にあふれ、誇り高くあります。そんな彼女は、いつも緊張した状態で日々を過しているのではないでしょうか。彼女の緊張を解いて自然な時間を与え、彼女の支えになれるような人。そんな人が彼女にはふさわしい気がします。
沢渡 ほのか
彼女の特徴を一言で言うと、とても容姿が整っていること。いわゆる美人だと言うことが上げられると思います。容姿的な面を考えれば12人の中でも1番だと思います。 特にイラスト面でもそれは現れていて、イラストだけぱっと見せられて誰が一番かわいいかで選べば私は彼女を選ぶでしょう。では、なぜ彼女はこの位置にいるのか。それは、私がきっとひねくれものだからです。(笑)
彼女は、幼いころにいじめられた経験があるのか、ただ単に潔癖すぎるのか、多少男性恐怖症の傾向があります。その為、彼女と親しくなるためには他の人以上に苦労が多いはずです。主人公は偶然にも彼女の信頼を得ることができますが、普通の男性とは必要最低限のやりとりしか彼女はしないでしょう。さて、彼女がこの位置にいるのはそんな彼女が自分からみて魅力的に映るかどうか考えたからで、おそらく知らずに現実に彼女に接したのならば自分の容姿を鼻にかけたような女性に映るのではないかと考えたからです。
もっとも、それが彼女の表面しか見ていないのは確かなことです。彼女は内面的には非常にもろく、傷つきやすい性格をしています。彼女の設定は一つ一つを見るとたいして個性も感じられないものですが、細かい設定が非常に数多く、それらが集合して素晴らしいキャラクターとなっています。
さて、とある人が彼女こそがこの作品のヒロインであると言っていました。そこで私は、彼女は人気もあるが多く嫌われてもいると言いました。すると、その人は「それこそ、ヒロインの条件に当てはまっているじゃないか」と言いました。その言葉に、私は妙に納得してしまいました。多くの人気が現れる上に多くの非難も現れる。それは、その存在が大きく知られ、大きく語られることの逆説的な証明でもあります。彼女の持つキャラクターとして普通だけども普通ではない。そんな雰囲気はやはりヒロインとしてふさわしい素質なのかもしれません。
人気のあるキャラクターについて
こういった、多数のヒロインが出てくる作品にはよくあることなのですが、このゲームにも人気のあるなしは結構激しく存在します。しかし、先に述べた通り人気の全く無いキャラクターは存在せず、どのキャラクターにも熱烈なファンは存在します。
キャラクター的な人気でいうと、誰が一番人気かはわかりませんが、沢渡ほのか、安達妙子、綾崎若菜、杉原真奈美の4人が比較的人気があるようです。理由は、色々あると思いますが、ヒロイン紹介を見て分析するのも一興かも知れません。(笑)私自身はこの状況についてはプレイヤー層を鑑みればとても納得のいく結果だと思っています。
続編について
本作品には2000年1月に発売が予定されている続編があります。しかし、公開されている内容は前作の主人公の葬式から始まると言う、非常に突飛なものです。
この設定には、納得できていないファンが多く存在しているようです。確かに、主人公級のキャラクターが途中で不意に死んでしまったり、いなくなってしまったりする作品は多数あります。しかし、前作の主人公と言えばプレイヤーの分身でもあります。それが物語の都合上、さくっと死んでしまっては、納得いかないのもわかると言うものです。
ただ、この納得いく、いかないは感情的な問題です。しかし、こういった感情に働きかけるような内容の作品を作っておいて、続編にこういう設定を持ってくると言うことは、製作者側はファンの感情を全く無視しているとしか思いようがありません。
採算を度外視した作品第一主義を掲げるのであれば、こういったプレイヤーの思惑は無視できます。要は、売れなかろうがなんだろうが、わかる人に名作と言われるだけの作品を作れば良いのです。しかし、それでは今までの本作品に関する商品展開に大きく反するところとなり、製作者側の意図が見えない大きな部分であります。
つまるところ、製作者は何も考えずに砂上の楼閣を作り上げているだけではないかと言う疑惑を浮かべざるを得ません。
他にもいくつかの不安要素はあります。
まず、シナリオライタの変更が挙げられます。前作では、良いも悪いも小説とゲームのシナリオは大倉らいた氏一人で書かれており、その文脈には統一性がありました。ここで、この統一性が崩れてしまう可能性があります。どうも続編では4人で分担してシナリオを担当しているようですが、どうなるかがとても不安です。
第2にあまりに早い発売日の確約。発売もとのNECインターチャネルと言う会社は、前身のNECアベニューの時代からゲームの発売日破りで有名で、中には発売予定に上がったまま立ち消えになってしまった作品すらあります。この続編が発売日通りに発売されると心から信じている人を私は一人も知りません。これは、ゲームの製作会社としては致命的な信用の欠如ではないでしょうか。
登場声優の心理的要因もあります。まず、声優の一人が引退してしまったため、登場人物の一人の声が変わります。他のキャラクターについてはそのままなのですが、はっきりいって悪い噂ばかりが聞こえてきます。信憑性が限りなく薄いので、具体的内容はここには書きませんが、話1割にしてもだいぶひどい状況です。本作の声優はとても演技が上手く、このまま業界の波に飲まれて消えてしまわないことを切に願うばかりです。
内容的な問題はどうでしょうか。
この続編では、前作のコンセプトの一つであった、遠距離恋愛と言うものを一切排除してしまっています。なんと、12人のヒロインたちは全員東京に引っ越してきているのです。これも驚くべき設定と言えるでしょう。
切なさの要因が、遠距離恋愛から主人公の死へと移ったわけです。こういった、コンセプトのすり替えは、私はあまり好きではありません。たとえば、この為に「Final Fantasy」シリーズが好きになれなかったりしていますし、「Dragon Quest」も5以降はシステムの違いによりあまり好きになれていません。ただ、これは私個人の問題であり、タイトルに偽りはないのでそれほど大きな問題ではないでしょう。
後は、ゲームシステムがどうなるかですが、これについての情報はいまだ出まわっていませんね。
さて、こういった状況からの私の心境は、これでいい作品が作れるものなら作って見てください、といったところです。まだまだ、この設定で名作ができあがってこないとは限りません。私は、真のジャッジはゲームをプレイしてから下そうと早々と決めてしまいました。9割9分方、予想は悪い方向へ裏切られるだろうと私は考えています。だけど、好きな作品の続編が、まだ少しでも名作になる可能性が残されているなら、実物を見てから判断をしても遅くはないと思います。
・・・でも・・・たぶん、駄目なんだろうなあ。(笑)
1999.11.11