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FireEmblemマケドニア興隆記
 幕間編
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十二章 草莽に下りて

 マチスがオレルアンの地で統治を始め、最初の冬をなんとか乗り越えようと苦戦していたころのこと。グルニアの名将と謳われるカミユはアカネイアのニーナ王女を彼の信頼する仲間達と共に数人で守り、グルニアの森の奥深くに身を隠していた。カミユは、ミシェイルより時が来るまで軽はずみな行動をしないよう、耐えるように願われていた。とは言うものの、日々ドルーアに蝕まれていくグルニアの現状を聞くたびにカミユの心情は大きく揺れていた。
 カミユはマケドニアの者から密かにニーナを受け取り、グルニアの奥深くへと隠した後、このことをただ一人グルニアの国王であるルイにのみ報告した。カミユはニーナの件について、ルイにだけは詳細に伝えていたのである。このため、ドルーアでの会談以降、かねてより事が起こることをルイは理解していた。それでいて、ルイはカミユのその行動をなんら止めることはなかった。今までの慣例から、カミユはルイに報告し、ルイが制止しなかった事柄については自由に行動する。カミユは、ルイ国王に甘えているということをわかっていつつもニーナの救出作戦を遂行した。
 その報告を受けたルイは、ドルーアによって半ば無理やり剥奪されていたカミユのグルニア黒騎士団長の任を正式に解いた。決してカミユを断罪しようとしたようなものではない。ルイは、カミユにこう告げたのだ。
「そなたを縛るものはもはやこのグルニアにはなにもない。そなたがそなたの考えの通りに動き、それが大陸にとって良い結果となることを願っている。」
 それは、カミユがカミユ自身の意思によって自由に動いてほしいとのルイの心配りだった。
 カミユはルイの病床の前で跪き、勇猛果敢で美丈夫な将軍とは思えないほどの涙を流しながらルイの言葉を受けた。ルイの願いを知って尚、カミユはルイとグルニアに忠誠を誓った。
 この時のカミユは、ルイの命の灯火が徐々に消えてなくなろうとしていることを肌で感じ取っていたのだ。ルイはカミユに何も頼むところ無く、退去を促した。カミユが城を去るその時、老将のロレンスはカミユが見えなくなってもその去っていった方向を、じっと見つめていたという。
 カミユに近しく、彼がニーナを救出したことを知っている者は、概ね彼の行動には好意的であった。それでも、カミユは自分を常に問わずにはいられないでいた。こうしてニーナ姫の側にいるのは自分のエゴではないかと。
 カミユが薄々と自覚していたニーナへの想いは、彼女と再会した時に確かなものとして彼に衝撃を与えた。そして、日々ニーナの側にいることでグルニアに対して何もできない自分を責めていたのだ。
 ニーナにもカミユの苦悩は痛いほど良くわかっていたが、自分が原因であることもあり、何も言うことはできないでいた。ニーナ自身、自分が消えてしまえればどんなに楽なことであるかと考えることがしばしあった。それでも彼女は、それこそ自分を信じている者への裏切りとなることも知っていた。そしてただ、辛いときでも、できるだけカミユの近くに居るようにしていたのである。
 カミユが身を隠したのはグルニアの東北部だった。ドルーアとアリティアに挟まれた地であるが森ばかりの土地で街道は通っていない。比較的大陸の中央部に近くありながら、ドルーアに近いこともあり、未開といっても差し支えないような場所であった。
 グルニアへ向かう街道は、グルニアの王都からは北へまっすぐ伸びている。カシミア大橋という堅固な石橋によって海峡を渡るとアリティア王国、さらにカシミア大橋の北半分を渡ると砂漠を経て魔道の都カダインへ到達する。グルニアから陸路をアカネイアに向かうには、一度北へ向かいアリティアへ赴いてから、グラを通り、アドリア山脈の峠道を抜けることになる。陸路とは言え、アリティアとグラの間、グラとアカネイアの間は海峡を船で渡るしかない。アカネイア中央へ至るその道程は、大陸のどの国家よりも長いものであり、グルニアが辺境の国家と呼ばれている所以にもなっている。
 カミユが隠れているのはその街道からはだいぶ離れている場所であった。グルニアの奥地にはラーマン神殿と呼ばれる古い遺跡がひっそりと佇んでいるのだが、そこよりも更に奥地へ進んだ場所だ。街道からはずれて歩くならば道無き道を歩くことになり、たどり着く為に七日以上は優にかかるだろう。潜伏して絶対に見つかりようが無い場所としてこの場所を選んだのはカミユ自身であった。
 この場所は、カミユ達以外は、ミシェイルと、マケドニア竜騎士団のわずかな人たちしか知らない。竜騎士団の騎竜が時折物資を持ってきてくれる以外は、当然訪れる者もいない、ありえないような場所である。
 そのような場所で、カミユは日々、彼を信頼する部下達から大陸の情勢を聞いたり、自己の鍛錬をしたり、ニーナの話し相手などをして過ごしていた。
 カミユが耳にするグルニアの情勢はひどいものであった。グルニアには黒騎士団と双璧をなす、もう一つの主力部隊である戦車大隊があった。戦車と呼ばれるのは正確にはシューターと呼ばれるものである。木造の魔道機から魔力を持った矢を打ち出す機構を持った兵器だ。戦車大隊はこれを多数配備している部隊で、シューターそのものが木でできていることから俗にグルニアの木馬隊とも呼ばれていた。
 しかし、その部隊はドルーアによってアカネイアの程近くに常駐させられた上に将軍のギガッシュは解任されてしまっていた。有効な装備もおおかた取り上げられもはや部隊としての形状をなしてはいない。
 黒騎士団の団長は、カミユがドルーアから解任された後、早くからドルーアに取り入っていたカナリス将軍が務め、ドルーアに任された領地にて私腹を肥やすばかりである。心ある者はみな騎士団中枢から追いやられ、もはや黒騎士団はかつて大陸一の精鋭と呼ばれていたことの面影など影も形もなくなってしまっている。
 グルニア領内は森で木を切り出す者も、狩をするものも、畑を耕す者もまばらになり、かなり荒れ果てた状態であった。温暖な気候の土地柄である為、極端な飢餓には陥ってないが、それでも食を求める人が城へと群がっている。
 その城の方も往時の華やかさは片鱗も無く、廃墟とまごうばかりの有様だ。治安はすこぶる悪く、略奪と暴行が街中に横行している。路傍には屍が転がり放置されている様も見て取れたというし、それは日々、数を増してもいるという。
 かと言って、王城にこれに対する策を実行できる者はいない。グルニアと最後まで共にあろうと、王城に残ることを自らに課した将軍のロレンスは、どうしようもない現状と、ろくに有効な手を打つことができないでいる自分に歯噛みする思いでいた。
 それは、その話を聞きつつ何もできないでいるカミユも同様であった。マケドニアからは時が来るまで待てと言われている。カミユ自身も、国王から好きに行動せよと言われている今であっても、現状で事を起こすことが無謀であることはわかっていた。それゆえ、彼を慕って集まってくれている者達から、挙兵を乞われることが再三あったとしても、何も言うことはできなかったのである。カミユの苦悩を良く知る者はそんなカミユを慕いまわりに集まっていたのだが、窮状から英雄の登場を渇望しているグルニアの民はいつまでたっても立つことのないカミユに対して徐々に失望の念を強くしていった。中には、カミユはすでにこの世にはいないとまで言いだす者すらいた。
 それでも、カミユとその仲間は粘り強く各地と連絡を取り、来るべき蜂起の時に向かって軽率な行動を起こさないようにと呼びかけ続けていたのである。

 そんなカミユにニーナは一つの提案を行った。アカネイアの抵抗勢力と連絡を取ることができれば力となってくれる者がいるかもしれないと。ニーナは、信頼できる者の名前を数人挙げた。傭兵隊長であり、メリクルソードの使用を許可されたアストリア。弓兵隊長であり、パルティアの使用を許可されたジョルジュ。女性でありながら聖騎士の称号を持つミディア。そして、宮廷司祭のボア。
「メリクルソード、パルティアと言うと、アカネイアの神器ですか。」
「そうです。あなたが持つグラディウスと同じく、アカネイアの神器です。」
 カミユはメリクルソードやパルティアの名前が出てきた時、そう聞かずにはいられなかった。アカネイアの三種の神器はそれぞれ武器の形態を取っており、それぞれを聖槍グラディウス、聖剣メリクルソード、聖弓パルティアと言う。アカネイアの建国王はこれらの神器を神から賜り、その力によってアカネイア王国を興したと言われている。
 しかし、その神器も、アカネイアパレスの陥落と同時にドルーアの手へと渡った。その時に、聖槍グラディウスのみが、戦役の序盤に功のあったカミユへと下賜されたのである。他の神器の行方についてはカミユは知らなかったが、おそらくアカネイアパレスに安置されているものと思われた。
 カミユにとって、このグラディウスは武人の誉れであると同時にアカネイアへ敵対したことの証でもある。そのことに触れればニーナが辛い思いをしはしないのか。カミユにはそのことが最も気がかりだった。
 だが、カミユは焦りらしきものを表には出したものの、それを悟られるようなことはなかった。こういった情勢である以上、この話題が出てこない方がおかしいことはもとよりわかっていた。で、あればどうすればよいのか、カミユはその行動を組み立てた。
「ニーナ様がそうおっしゃるのであれば、信頼できる者……そうですね、ベルフがよいでしょう。彼にアカネイア中央部の動向を探らせましょう。しかし、我々グルニアの者がアカネイアの者に信用してもらえるとは思えません。彼らに接触した時のことを考え、ニーナ様よりアカネイアであることの証となるものを賜りたく存じます。」
 ニーナは、あらかじめ用意してあったのだろう、一枚の書状をカミユに手渡した。それには、この書状を持つ者はニーナの名を代行するものであると記されており、ニーナのサインが記され、アカネイア王国とニーナの印章が押されていた。
 カミユは跪き、うやうやしくそれを受け取った。
「ありがとうございます。それではベルフをアカネイアの中央へ向かわせましょう。」
 カミユはそれを元黒騎士団の一人であるベルフに手渡し、アカネイアの中央へ向かわせた。平時であれば、片道一月ほどの道程である。

 ベルフはなかなか戻ってくることは無かった。ニーナはカミユと会うと時々、抑えきれなくなるのであろう、ベルフを心配するようなことを口にした。カミユはベルフがいかに優秀であるか、この使命がどのようなものであるかをそのつど説明し、ニーナを安心させようとしていた。カミユにとっても心配な事ではあったのだが、カミユ自身がそれを口にすることはなかった。
 しかし、ベルフが帰ってくる前に一騒動起きることとなった。誰も来ないはずの隠れ家の近くでけたたましい女性の声が聞こえたのである。カミユは念のため急いで数人を集めると、剣のみを持って声のする方向へ向かった。もはや春から夏へと移ろうという時節であり、繁る木々は鬱蒼としていてそうとう歩きづらい。それでも、文句とも愚痴ともつかないその女性の声は、だんだんと近くなってきていた。
 突如、目の前が開け、カミユ達の前に一組の男女が現れた。男の方は軽装の動きやすい格好をしていた。女の方は軽装と言うよりは極端に露出の高い服装であり、薄絹のようなものを別に身に纏っていた。男はともかく、女のその装いは、とてもこのような奥地まで来れるような服装には見えなかった。
 双方共に年のころは若く見えた。おそらくカミユと同年代か、カミユよりも少し若いくらいであろう。
 カミユ達とその男が剣を構えるのはほとんど同時であった。男は二本の鈍く赤く光る剣を、交差しない程度に斜めに構えた。カミユの脳裏に、一つの名前が浮かんだ。そして、それはその男の動作からも実証されている。二本の剣を構えたその男には恐ろしいほど隙が無かった。
「お前達は下がっていなさい。この男はお前達に相手ができるような者ではない。」
 男のただならぬ様子に、カミユに付き従っていた数人は素直に後ろに下がった。
 女の方は明らかに動揺していた。カミユ達の服装は、満足に手入れされていないとはいえ、平時に黒騎士団員が身に着ける軍服である。それが黒騎士団のものであるとわからないまでも相当立派な物であることは見て取れるような装いだ。人里離れたような奥地では、人に会うこすら珍しいのであるのだから、場違いと感じられてもしかたないものである。もっとも、男の方は全く気にする様子も無く、ただカミユに集中していた。
「このような奥地にいかなる用件か。」
「あ、あのっ。私、盗賊に襲われて、それをこの人が助けてくれたんです。」
 答えたのは女の方だった。だが、それもおかしな話だった。人気のない森の奥地に、まるで芸人のような格好の女性、さらに盗賊に襲われたと言う。このような辺鄙な場所、いかに盗賊でも近づきはしないだろうと思い、カミユはここに隠れたのだ。しかし、実際に人がいる。
 そこまで考えた時、カミユは他に人の気配があることを感じた。男の方もそれは感じたようだった。
「……すまぬが、のんびり話している暇はなさそうだ。用向きは後で聞く。離れていろ。」
 搾り出すような男の声だった。
 カミユは、それがこの二人を追ってきている者達であると瞬時に判断した。そしてカミユの推測が正しければ、この男とまともに対峙することは無謀極まりないことであることは最初から明らかだった。
「ならば、早く話ができるよう、そちらの仕事を手伝おう。」
 カミユは咄嗟にそう言葉にしていた。カミユの言葉に、カミユの部下達は少し驚いた顔をした。
「……勝手にしろ。」
 男のもの言いははき捨てるかのようであった。すでに男はカミユではなく、周囲の気配に集中している。
 男とカミユは、気配を感じる方へ向き直った。五、六人だろうか。ばらばらと柄の悪い男達が姿を現した。男達は手にそれぞれ斧を持っていたが、それはとても戦闘に使うような戦斧ではなく、きこりが普通に木を切ることに使うような斧であり、そのそれぞれの形もばらばらでまるで統一感がなかった。木が繁った森の中、カミユとその部下達は十分に剣を扱える場所に思い思いに散り、男達に向かい合った。
「お頭……やつだけじゃなく、大勢いますぜ。」
 男達の中では最も派手な格好をした者が一党の頭目のようであった。
「ナバール!貴様、そいつらをどこから連れてきた!」
 その男が吼えたが、ナバールと呼ばれたその男も、カミユも微動だにしない。だが、カミユはその男がナバールと呼ばれたことに一人、納得していた。カミユの部下にも驚いているものがいる。
 ナバール、大陸の戦場を転々としついには死神という二つ名で呼ばれるようになったほどの剣の腕を持つ剣士であった。カミユが伝え聞くのは赤く光沢を放つ二本の剣を自在に操る剣士。それは、まさしく彼の目の前にいた。
「お、お頭……。」
 一党の面々は見るからに動揺していた。男達は、いかにナバールと言えども、一人であれば何とかなるだろうとたかを括っていたのだ。それは頭目も同じであった。それでも頭目は一瞬ためらいはしたものの斧を掲げて叫んだ。
「こうなったら関係ねぇ。まとめてやっちまえ!」
 頭目が先頭を切り、男達はめいめいにカミユたちへと襲い掛かった。しかし、勝負は一瞬で決まっていた。ナバール、カミユは別格としてもカミユに付き従う者達も元黒騎士団の一員である。どこともしれぬ賊ごときに白兵戦で後れを取るようなことはない。賊の頭目はナバールに斧を大振りにして襲い掛かったが、それを左の剣で流され、右の剣に串刺しにされていた。カミユには二人の男が襲い掛かったが、カミユは軽くかわしてその胴を薙ぎ払った。気が付くと、男達の全員が地面に倒れ伏していた。
 カミユは部下達に何も言わずにただ首を縦に振って次の行動を求めた。カミユの部下達は、黙って男達全員に止めを刺した。中には意識があり、助けを乞う者もいたが、彼らはためらうことはなかった。ナバールはそれを醒めた目で、女の方は震えながらそれを見ていた。
「な、なにも殺すことはなかったんじゃない?」
 女の声は上ずっており、ようやく聞き分けることができた程度だった。 
「失礼。こちらも少々わけありでして。」
 カミユには女が息を飲む様が見て取れた。だが、カミユもナバールも、そのような女の様子は意に介してはいなかった。カミユはナバールから感じられていたすさまじいほどの殺気がひとまずは静まったことを肌で感じていた。カミユとナバールはほぼ同時に剣を下ろしていた。
「さて、ナバール殿。我々も、貴殿と好んで剣を交えようとは思わぬ。なぜ、このような場所にいるのか説明しては頂けぬだろうか。」
 ナバールは静かに肯いた。しかし、すぐに連れの女へと話を振った。
「……フィーナ、お前から説明してくれ。」
「え、え!私ですか?」
 わけもわからず、半分以上意識の外で話を聞いていた女、フィーナは突然に話の中心に引き込まれた。
「……私も、なぜあなたのような人があのような場所にいたのかがわからぬのだが。」
「……それもそうね。」
 そしてやや間をおいて、そのフィーナと呼ばれた女性は、緊張しながらもだいぶ長い説明を始めた。

 フィーナはもともと旅芸人の一座であったと言う。しかし、親方に言い寄られることが多く、それを拒否することによって嫌がらせが行われ、とうとう逃げ出してきてしまったのだという。
「旅芸人か。確かにそう言われれば納得はする。」
 フィーナのその奇抜な服装は、踊り子のものであった。街の広場や、酒場の舞台などで踊りを披露することを生業とする者である。
「しかし、戦争中では見世物どころではなかったのではないのか。」
「……そんなこと、私に言われても知らないよ。オレルアンとか、ワーレンとか、ちょっとは落ち着いた場所にいたのに親方がいきなりグルニアに行くって言い出してさ。途中で我慢できなくなって森の中へ逃げ出したんだよ。」
 と、フィーナは親方の悪口を延々と言い始めた。要するに、親方はフィーナに色目を使っていたらしい。しかし、フィーナには全くその気はなかったと。
「……わかった。とにかく、それで森に逃げ出したと。……無茶をする。」
 さすがに辟易としたカミユは中途で話題を切った。フィーナの話は続く。
 森へ入り込み、追われることを恐れて彼女は森の深いほうへ深いほうへと歩いていった。食べられそうな植物の実と木々に貯まる露で飢えをしのぎ、数日は歩いた。そして、一つの建物を見つけ、ひとまずそこに落ち着くことにしたのだという。
「あれ、何かの遺跡?石作りの建物で、中は結構しっかりしてたけど、外はぼろぼろなの。こんな森の中にあるのが不釣合いなほど大きかったけど。」
「……ラーマン神殿だ。」
 しばらく黙って話を聞いていたナバールが口を挟んだ。ラーマン神殿であればカミユも知っている。とは言っても、ラーマン神殿からでもカミユ達がいるところは歩いて優に丸二日はある。
 ナバールによると彼は町から町へといろいろな仕事をしながら渡り歩いた後、ラーマン神殿を盗掘するという盗賊団に用心棒として雇われたのだという。そして、ラーマン神殿へついたところ、そこを寝倉としてるフィーナを見つけたのである。
 盗賊団が、これ幸いとフィーナをかどわかそうとしたのを、ナバールが連れて逃げてきたのだという。
「……遺跡を確認すると言うから雇われて付いてきたのだ。何も抵抗できぬような女性を寄ってたかって絡め取るような趣味はない。」
 ナバールの方の言い分はそういうことであった。
「ラーマン神殿から逃げてきたというのか?あのあたりは普通に歩いていくにしても相当な距離があるはずだが。」
「……ああ、そうだ。最初は、少し森の奥へ入り込んで奴らを撒いた後に街道のほうへ戻るつもりだった……。まさか、ここまで追ってくるとは思ってなかったがな。」
 二人は、ラーマン神殿からほぼ一昼夜逃げてきたと言う。途中、数回あった賊たちの襲撃は、なんとかナバールが撃退していたが、さすがに数が多く、ある程度さばいた後は逃げに回ったのだそうだ。
「頭目がやられれば、やつらがどれほどしつこかろうが、もう追っては来るまい。」
 と、ナバールは言った。
「……。」
 カミユは考え込んだ。この者たちをどうするべきか。フィーナはともかく、ナバールを敵にはしたくない。ナバールの剣の腕はカミユが想像したもの以上であった。
 しかし、同時にナバールの為人も予想外であった。無口でぶっきらぼう、凄腕の剣士でありながら盗賊の用心棒をするなど仕事を選ばない。これだけを考えれば、ろくな人間ではないという印象となったであろう。だが、ナバールは自分を雇った雇い主に反してでもフィーナを助け、ここまで逃れてきた。これが死神とまで呼ばれるような者の行動なのであろうか。
 ……世間の風評に煽られてナバールという人そのものを見誤っているのかもしれない。そうカミユは考えた。単純に雇い主の命令を聞かないというだけであれば傭兵として役には立たない。だが、ナバールはそれだけではない。この者はこの者の意思に逆らわないような依頼である限り頼れる人物となるだろう。そう、カミユは結論付けた。
「あ、あの……それで私たちは……。」
 カミユのしばらくの沈黙に耐えられなかったのであろう。フィーナがそう言った。
「……フィーナさん……ナバール殿も、これからどちらかへ落ち着かれるあてはあるのですか。」
 と、カミユはたずねた。
「……この通りだ。雇い主がいなくなれば特に行く場所は無い。」
「私も……逃げてきた身ですから、とくにどこに行こうということはありません。ほとぼりが醒めたころに人里に戻って、どこかの町の酒場にでも雇ってもらえればと思っています。」
 と、二人は答えた。
 カミユが見て取るに、ナバールはともかく、フィーナは元気なように振舞ってはいるがだいぶ衰弱している。森の生活にほとんど知識を持たないであろう旅芸人が、一週間以上は確実にこの森の中をさまよっていたのだ。無理も無いことである。
「……では、貴殿ら二人を雇わせてはもらえないだろうか。……すまないが、町へ出かけるなどの自由な行動は控えてもらうこととなるが。」
 その時、ナバールの眼光が一時するどくなったようにカミユには感じられた。
「……その誘い。断れば、斬ると。」
 カミユの視線に言外の意味を見て取ったナバールは、かすかに眉を吊り上げそう口にしていた。
「ひっ!」
 殺気のこもったナバールの声に怯えたのか、ナバールの言った言葉の意味を理解したのか、フィーナが素っ頓狂な声を上げた。ナバールは、フィーナを軽く制すると、カミユに向き直った。
「知っている。その軍服、グルニアの黒騎士団のものだろう。……その徽章、ただの下士官クラスではない。相当の立場にあるのだろう。……先ほどの剣の動き、貴様の仲間もそうだが、貴様の剣の動きは格段に良かった。……貴様、一体何者だなのだ。」
 カミユは、しばし考え込んだ。さすが音に聞こえた剣士だけのことはあると。この短期間で、剣の腕のみならずそこまでの観察力、さらに知識。これが、剣士としてだけではなく、傭兵としての得がたい資質であるのだとカミユは理解した。
「……私は、グルニアのカミユ。元黒騎士団団長だ。周りにいる者達は、元部下だよ。」
 ややあって、カミユはそう言った。
「カミユ……。」
「えっ、誰?有名な人なの?」
 予想通りの答えであることを反芻するナバールとは対照的に、フィーナはそれこそ何がなんだかわかっていない様子であった。旅の踊り子であれば、大陸各地の風聞は耳に入れていてしかるべきであるところだが、一座の中にがんじがらめにされていたことを思えばこんなものかも知れない。カミユもナバールもそのように考えた。少なくとも二人とも気勢を殺がれたのは確かだった。
「なるほど。確かに貴様はカミユかもしれん。だが、俺たちを連れて行ってどうするつもりだ。雇うと言っても、体のいい軟禁だということにはかわらんのだろう。」
「……すまぬが、詳しい話はここでは話せぬ。……貴殿らには分の悪い話であることはわかっているが、そこを押して我々と共に来てはいただけぬだろうか。」
 カミユの物腰にナバールは強引さを感じられなかった。これが演技だとしたらたいしたものだと、ナバールは思った。
 カミユはナバールと争うことはできれば避けたいと考えていたが、何も関係もないにも関わらず巻き込まれたフィーナの口封じをしなければならないという事態もできれば避けたかった。そのために、カミユからすればあとはお願いするしかなかった。
「……フィーナ、お前がどうするか決めろ。」
「えっ、私が決めちゃっていいの!?」
「これからどうこうする予定もない。お前が行くというのならば行く。そうでなければ行かない。それだけだ。」
「お願いする。」
 カミユはフィーナに一段と深く頭を下げた。
「……わかったわよ。行くわ。あてもないし、行った方が危険がなさそうだし。ナバール、いい?」
「お前に決めろと言ったのだ、行くというのならば行く。」
「ありがたい。」
 ぶっきらぼうなものの言い方であったが、カミユの声にはかすかに明るさが含まれていた。
「案内してくれ。」
「……わかった。」
 話が決まったかと思うとそのナバールの一言で一行は移動を開始した。移動中、カミユ達に囲まれていたフィーナは、終始落ち着いてなかった。

 カミユがニーナを匿っている建物は、ほんの小屋程度の建物だ。カミユ達が手作りで作った小屋。それが、近くに密集していくつか建っている。一つはニーナの為の小屋、他の二つがカミユとその部下たちが使っている小屋だ。寝具や調理道具などの必要最低限のものは一通りそろっており、足りないものがあればマケドニアの竜騎士が持ってきてくれる。しかし、アカネイアの王女、グルニアの黒騎士団団長という立場を考えれば、いかにも粗末に過ぎる印象があるのはしょうがないことだ。
 そんな小屋の集まりの前に、カミユ達はナバールとフィーナを連れて戻ってきた。そして、カミユは中央の小屋の扉を軽くノックした。
「ニーナ様。ただいま戻りました。」
 ナバールが少し顔をひきつらせたが、誰も気がつくことはなかった。中からかすかに小さな声が聞こえたが、ナバールやフィーナには聞き取れなかった。カミユはゆっくりと扉を開けると、中にナバールとフィーナを招き入れた。
 ニーナは、木で作られた丈夫なだけがとりえといった印象の質素な椅子に腰掛けていた。今まで読んでいたのであろう、膝の上に開いたままの本を置いている。フィーナはニーナのその整った顔立ちに目を奪われた。粗末な小屋ではあっても衣服はそれなりのものを着ている。だが、ニーナの美しさはそういった次元を超えていた。ニーナの美しさはその姿形が持つ美しさもあるが、それ以上に威厳が伴っており、見るものに息を飲ませるのである。
 カミユはニーナの前に進み出ると儀礼どおりにひざまづいた。
「ニーナ様、騒ぎの原因がわかりました。この二人が盗賊に追われ、逃げていたのです。盗賊達については撃退いたしましたのでご安心ください。」
 ニーナは理解したと言うことなのであろう、一度頷いた。
「顔を上げてください、カミユ。お二方も、どうか楽になさってください。」
 カミユはゆっくりと顔を上げた。フィーナは半ば呆然としていたが、ナバールは胡乱げな視線をニーナに投げかけていた。
「……本物か?」
 ナバールはぼそっとつぶやいた。カミユの顔が一瞬ひきつった。カミユは何かを言いかけたが、それはニーナが仕草でおしとどめた。そして、ニーナはナバールへと向き直った。
「あなたは、解放軍にいたナバールですね。」
「……どうやら本物のようだな。俺の顔を覚えているとは思わなかったが……。アカネイアの姫様がこんなところで何をやってるんだ?」
「ナバール、貴殿、アカネイア解放軍の中にいたのか。」
 三者三様。カミユはアカネイア解放軍には詳しくはないので、ナバールが解放軍の中にいたことは知らなかった。ただ、その勇名のみを聞き伝えられ知っていたのみである。
「ああ、それよりも、何故ここにアカネイアの姫がいる。オレルアンに捕らえられているのではなかったのか。」
 と、ナバールはニーナに詰め寄ろうとした。ニーナは何かを言いかけたがそれはカミユが静止した。
「ナバール殿、この方をニーナ様と知ってのことであれば、貴殿のその振る舞いはあまりに無礼に過ぎるのでないか。」
 ナバールは小さく舌打ちして、ニーナとの間を開けた。もとより傭兵は権力者の権威など気にすることはない。カミユにはナバールもそのような種類の人物であることは今までの彼の言動でわかっていた。カミユはただ、ナバールをニーナから離したかっただけに過ぎない。そして、それはニーナにもわかっていたことだった。
「ニーナ様がなぜここにおられるかを話すためには、貴殿が我々と共にいることを誓約してもらわねばならぬ。」
 カミユの口調は強かった。
「……わかっている。もともと、ここにはそういう約束で来ているはずだ。フィーナもそれでいいな。」
「は、はい。」
 ナバールと、フィーナは納得していたが、一人ニーナは得心がいっていなかった。
「カミユ?いったいどういうことですか?」
「……お話が前後してしまい申し訳ありません。実は、こちらのお二方を雇い入れようと思いまして……。ナバール殿と会うことができたのは偶然とは言え、彼の者が腕の良い剣士であることは聞き及んでおられると思います。また、今まで女手がおりませんでしたので、フィーナ殿がおられればちょうど良いかと思いまして。」
 ニーナは、ゆっくりとナバールとフィーナを見渡した。
「……わかりました。よろしいでしょう。私がここにいる訳を説明しましょう。」
 ニーナから向けられた視線に、カミユはしっかり頷いた。
 そしてニーナは、オレルアンに捕らえられた後、ドルーアに護送される際にカミユの手によって助けられてここに隠れていることを説明した。その裏にはマケドニアの意思があることも。
「わかった。ニーナ姫がここにいること。マケドニアが協力していることが知られてはまずいことなのだな。」
「はい……そうです。ところで、ナバール殿は今までどのようになされていたのですか。」
「俺か……俺は、それほど変わりない。」
 レフカンディの激戦をもナバールは生き延びた。しかし、マルス達とははぐれたままであった。マルス達が隠れてしまい、その行方を知ることはナバールには不可能だった。まさか、ナバールも厄介になっていたサムシアンの巣に隠れているとはナバールも思わなかった。そのため、ナバールはまた気ままな用心棒稼業に戻ったのである。
 ドルーアと解放軍が戦い戦乱が続いていた世の中だ。一時的に戦乱が治まったとはいえ、ドルーアの過酷な統治にマケドニア、ドルーア統治下以外の地域は極めて治安が悪い状態にあった。ナバールのような流しの傭兵が働ける口は表といい裏といいいくらでもあった。その一つ、盗賊団の護衛を買って出た時に偶然カミユに会ったにすぎない。ナバールはそういったことをニーナに説明した。
「あ、あの、ひとつ聞いてもいいですか。」
 一通りの説明が終わった後に、ナバールも状況を確認できたところで、おずおずとフィーナが口を挟んだ。
「はい。なんでしょう。」
「あの、あなたは、アカネイア王国の……。」
「はい、アカネイア王国の王女で、ニーナと言います。」
 フィーナは、ふっと気が遠くなる思いだった。王族といえば、フィーナのような者、いやたいていの人にとっては雲の上の人で、目の前にいる人がいきなりそうだと言われても実感できるものではない。ニーナに、俗世間離れした雰囲気があるということはフィーナにもわかる。しかし、現実として考えが及ぶようなところではなかった。フィーナは単なる旅芸人でしかないのだ。
「……よろしいか。」
 フィーナが絶句しているところへ、カミユが口を挟んだ。
「さて、ナバール殿には我々と同様、基本的にはこのあたり一帯の警護をお願いしたい。見てのとおり、ほとんど人など来ないようなところではあるが、稀にナバール殿のような例外もないとは言えぬ。」
「いいだろう。」
 ナバールは、カミユの申し出に一も二もなく承知した。こういったあたりに、傭兵としての思い切りのよさがあるのかもしれないと、カミユは感じた。
「フィーナ殿は、ニーナ殿についていてもらいたい。」
「え、だって……。」
 ナバールと違って、フィーナはおかしいほどにうろたえていた。
「さっきも話した通り、ここには女手がないのだ。私が常に側についているわけにもいかぬ。あなたには、ニーナ様の側にいて、いろいろな世話や話し相手などをして欲しいのです。」
 いいかげん、カミユもそんなフィーナの反応に慣れたようだった。何も知らないような娘が王族の前に出ているのだから緊張するのも無理のないところであるとはカミユも理解していた。
「フィーナさん……ですね。こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。でも、あなたのためにも引き受けてはくれませんか。」
 と、ニーナ本人にも請われ、フィーナは大きくため息をついた。
「……わかりました。そうさせて下さい。」
 フィーナが納得してくれたことでようやく安心したのか、ニーナの顔から笑みがこぼれた。
「ありがとうございます。」
 と、ニーナは深々と頭を下げた。
 こうして、ナバールとフィーナは、カミユ達と一緒に行動することとなったのである。
 カミユは感じていた。ニーナの放っていた威厳から徐々に近寄りがたさというものが取れてきているのではないかと。ニーナをハーディンの元へ逃がしてから約一年半の間の彼女をカミユは知らない。それが何を意味するものかもわからない。カミユには一度別れる前のただただ美しく、神々しいまでの威厳をその身に備えたニーナのイメージがあった。その美しさも、威厳も、何も変わるところはない。しかし、その質は変化してきている。
 カミユがマケドニアからニーナを救出したことで、ニーナと会話する機会は以前に比べると圧倒的に増えた。カミユはその会話の節々に微妙な変化を感じている。それが、ハーディン、マルスと共にいた解放軍時代にもたらされた変化であるのか、緑条城で捕らえられていた間にもたらされた変化であるのか、カミユに知る方法もなかった。

 ナバールとフィーナがカミユ達と行動を共にするようになって以降、ナバールはカミユの部下達と一緒の小屋で、フィーナはニーナと同じ小屋で寝起きするようになった。フィーナは、最初こそ緊張してがちがちに固まっていたが、意外と早くその境遇に慣れて言った。ニーナはフィーナが話す話を興味深く聞いた。フィーナの話はフィーナが旅芸人として各地を巡っていたときの思い出話であり、庶民の喜びと悲しみに満ちていたものだった。
 また、フィーナは時折、カミユ達にその踊りを披露することもあった。小屋の前を切り開き、急ごしらえのステージを作ってフィーナは踊りを舞った。踊りを舞うフィーナは、華麗に跳躍し、回り、収縮した。その動きは普段、愛想と言うものに全く縁が無いナバールでさえ息を呑んで見とれるほどであった。
 ナバールは主に小屋の周りの見回りをすることになった。カミユとその部下達と交替で見回りを行う。また、カミユ達の剣技の鍛錬に付き合うようにもなった。もっとも、これは半ばカミユが強引に参加させた側面もある。
 ただ、当然のごとくナバールとまともに相手ができるのはカミユのみであった。ナバールが使う、二本の剣を使った剣技は、攻守が自在に入れ替わるものだ。両方の剣で防御したかと思えば、片方をバランスを崩しつつ外して攻撃に回る。防御を捨てて、相手より早く攻撃に出る。片方の剣で防御したと思えば、次の瞬間もう片方の剣が防御に回り、最初に防御していた方の剣は攻撃に回る。カミユにもカミユ達の部下にとってもナバールはとてもよい練習相手であった。
 アカネイアへ捜索へでていたベルフは、四ヶ月ほどで戻ってきた。しかし、その結果は芳しいものではなかった。
「……報告申し上げます。探索の結果、グラとアカネイアの海峡付近にてアストリア殿と接触することができました。アストリア殿の話によると、ミディア殿、ボア殿は、他のアカネイア将兵達と共にアカネイアパレスに幽閉されているとのことです。アストリア殿自身はドルーア軍にて兵役に就いておりました。ジョルジュ殿の行方については残念ながら全く手がかりを得ることはできませんでした。」
「そうですか。アストリアはこちらへ来ないのですか。」
「アストリア殿におかれましては、ニーナ様がご壮健であらせられることをことのほか喜んでおられました。しかしながら、ミディア殿達が捕らえられている為、今すぐに馳せ参じることはできないと仰せでした。」
「……そうですか。わかりました。」
 報告を聞きそう答えたニーナが安堵していることを、カミユは気が付いた。
 カミユがこのことについて後で聞くと、その理由をニーナは話してくれた。アストリアはアカネイア王家の為であれば他の全てのことを犠牲にするような人物なのだと言う。アストリアとミディアはニーナも知る恋人同士であるが、ニーナはミディアが囚われていることまでは知らなかった。だから、アストリアが自分の恋人を捨ててまでニーナの元に来るようなことがなかったことについて、ニーナは安心したのだと言う。ミディアもボアも、ドルーアに抵抗したアカネイア王国軍の中ではカリスマ的存在であり、他のものを押さえつける為の人質の意味でアカネイアパレスに幽閉しているのだろうという。
 ベルフに聞いたところに寄ると、アストリアはカミユが側にいると言うことでひとまずは状況を納得したらしい。アストリアはカミユがドルーア同盟側の人間であることは明らかだとしていたが、その上でニーナを助けたこともまた間違いないとした。カミユが側にいるとすれば当面は大丈夫だろうと言う結論だったのだろうという、ベルフの推測であった。
 当面と言っても、情勢がどのように流れていくかは予想できない。カミユはそうしてグルニアの旗の下、祖国をドルーアから奪回する日のことを待ち続ける。しかし、国王ルイのことを含め、不安なことは多く彼を悩ます。その状態はかなりの間続くことになる。
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